住宅展示場やモデルハウスに行くと、「オープンキッチン」ばかりですよね。
我が家が家を建てるときも、ハウスメーカーから提案された間取りは、オープンキッチンでした。
でも、私はどうしても「本当にオープンキッチンでいいのかな?」という気持ちがありました。
どこを見てもオープンキッチンなので、間取りの打ち合わせを始めるときも「キッチンは当然オープンキッチン」と無意識に思い込んでしまいがちです。
さらに、南東の日当たりが良い土地なら、「せっかくの特等席には、開放的なリビングを置くべきなのかな……?」と考える方も多いのではないでしょうか。
我が家は、そこにあえて「独立キッチン+ダイニング」を配置しました。
この選択、5年経った今でも「我が家はこれで良かった」と思いながら暮らしています。
今回は、一般的なLDK配置から外れて、あえて「南東の独立キッチン+ダイニング」にした我が家の思いをお伝えします。

オープンキッチンで感じた我が家の限界
実は我が家、この戸建てを建てる前に分譲マンションを2回購入・住み替えた経験があります。
最初のマンションは、敷地が広い大規模マンションの12階。
分かって買ったものの、住み始めると大人だけでも「駐車場から部屋までの移動」が地味に大変でした。そこに子ども連れ+荷物が加わると、大変さはさらに倍増!
当時、完全なワンオペだった私は、時間と体力を消耗するこの環境で、家事・育児・仕事をこなしていくことに、だんだん無理を感じるようになっていました。それでも、簡単に引っ越すことはできず頑張っていましたが、無理がたたって体調を崩し、独身時代から続けていた職場を辞めることになりました。
その後、同じ業種で場所を変えて数年した頃、家族が増えました。「ここで仕事をしながら2人の育児と家事は限界!」そう思っていたとき、仕事帰りに見かけたマンションの1階住戸に、専用駐車場があることが分かりました。専用テラスを通れば、すぐに車に乗れる駐車場です。
駐車場から部屋までの無駄な移動時間が減る。そう思い、迷わず専用駐車場がある住居に引っ越しを決めました。
どちらのマンションも、間取りは「オープンキッチン」でした。
1軒目は西向きの横長リビング、2軒目は南向きの縦長リビング。2軒目のマンションでは駐車場への移動ストレスもなくなり、なんとかワンオペで日々を回すことができていました。「ここだったら、やっていけそう」そう思っていたのですが、コロナを機に夫が完全在宅勤務になり、4人家族で3LDKでは部屋数が足りなくなりました。そこで、注文住宅で戸建てを建てることになったのです。
住宅展示場に行くと、オープンキッチンは、「開放感がありますよ!」「家族と会話しながらお料理できますよ!」と、営業さんが素敵なメリットをたくさん教えてくれますよね。
本当にその通りで魅力的ですし、実際におしゃれに使いこなしているご家庭もたくさんあります。私も、オープンキッチンがリビングに溶け込んでいる素敵なモデルルームを見て、ワクワクしました。でも、我が家の場合は、「素敵なキッチンを維持する余裕はない。1秒でも早く、効率よく家事を終わらせたい!」これが本音でした。
配膳はいつでも「一人運動会」
マンション生活では、ダイニングテーブルまで料理を運ぶのに、キッチンのカウンターをぐるっと回って何度も往復。
カウンター越しに「これ持って行って〜」と頼める人もおらず、忙しい平日の食事のときは笑顔で過ごす余裕もありませんでした。早足で何往復も動くので、まるで運動会のリレーでずっとコーナーを走っている気分(笑)。
思い返せば、移動のストレスをどうにかできないかと、今も人気のある、ダイニングテーブルをキッチンに横付けする形も当時はやっていました。玄関からリビングに続く廊下を完全に塞いでいました。
リビングに行きにくいなんて文句は言わせない(笑)。
子どもと一緒に帰ってきてからの戦場をいかに効率よく勝ち取っていくかが重要だったのです。
ダイニングテーブルがキッチンのすぐ隣にあるのは配膳から下膳までは確かに楽でした。
しかし、次第にシンクのすぐ隣で食事をすることに抵抗を感じるようになったことと、リビングからキッチンに行くためにダイニングテーブルを回って行くことに不便を感じ、結局、私が運動会をしていればいいのかと元の配置に戻りました。
そんな過去を振り返り、我が家にとっては「振り向いてポン!と配膳、サッと片付けを完結できる動線」にした方が、圧倒的に家事がスムーズに回るし、自分のストレスが少ないということに気づいたのです。
子どもが寝ている間、キッチンでの作業がやりづらい
子どもの普段の昼寝はもちろん、体調を崩したときも、いつでも気配を感じられるリビング横の部屋で寝かせることが多くありました。
元気なときも体調が悪いときも、寝ている間はとにかく静かにゆっくり休ませてあげたい。
そして親としては、子どもが起きたときにすぐ対応できるよう、寝ている間に料理やキッチンの片付けを済ませておきたいんですよね。
なのにオープンキッチンだと、調理や片付けのちょっとした物音がダイレクトに響いてしまいます。
実際、物音で子どもが起きたことがありました。
それ以降は「音で起こしちゃったらどうしよう…」と気を使って作業することになり、思い切って動けずもどかしい思いをしていました。
換気扇の音でテレビの音が聞こえない!「テレビ vs 換気扇」の音問題
子どもが成長してテレビのリモコン操作を覚えると、換気扇の音でテレビが聞こえないからとボリュームを爆上げ!!
我が家のオープンキッチンでは、換気扇の「ゴーッ」という音が想像以上に響きました。テレビの音が聞こえなくて、大事な場面のセリフを聞き逃して悔しくなる子どもの気持ちも分かります。
とはいえ、せっかく家族の食事を作っているのに、リビングから流れてくるテレビの爆音に私もイライラ……。
お互いに悪気はないのに、音のぶつかり合いでストレスが溜まっていました。
家中に広がる「料理のニオイ」とマンションの換気事情
そしてもう一つ、2軒のマンション生活を通して、ずっともやもやし続けていたのが「家中に広がる料理のニオイ」です。
オープンキッチンだと、焼き魚や炒め物、カレーのニオイがリビングはもちろん、家全体にまで広がってしまうんですよね。
しっかり換気したくても、我が家が住んだ2軒のマンションでは玄関側に換気扇の排気口があり、ニオイが逆流してくるため、玄関側の窓が開けられない……という事態になっていました。
ファブリーズや換気だけでは限界があり、ニオイが強く残る料理はそのうち敬遠するように…。どうしても食べたいときは換気扇を「強」にして轟音の中で食べる状態でした。
夫がずっと家にいる息苦しさ――「一人になれる空間」が必要だった理由
夫が在宅ワークをしていると、どうしても避けられない衝突も増えました。
掃除機をかけていたら「今、会議中なんだけど」と言われ、「そんなの聞いてない!会議なら『今から会議』って事前に教えてよ!」と大激怒しました〜(笑)。
本人が「気にしないで」と言ってくれたとしても、掃除機事件後は先に確認してから掃除機をかける自分がいました。仕方がないとはいえ、夫のために生活音を気にしながら家事をするのは今まで感じたことのない、ものすごい疲労感でした。お互い悪いことはしてないのに、夫の在宅ワークに対してストレスが溜まる一方でした。
3LDKのマンションだったので、音の問題以前に「夫が常に家にいて、夫の気配を感じない場所がないこと」そのものに限界を感じていたのだと思います。
だからこそ、物理的に空間を区切って「一人になれる自分の場所」が必要だったのです。
見えることだけが「見守る」ではない?
常に「視線」に晒される、キッチンという名のステージ
最初のマンションに住み始めたときは、まだ子どもが0歳の頃でした。
初めての育児ということもあり、疑いもなく「対面キッチン=子育てに最適!」と思い込んでいたんです。
確かに、いつも子どもの様子を見守ることができる環境は安心・安全でした。……でも同時に、私自身の「逃げ場」がなかったのも事実です。
それは子どもに対してだけでなく、夫からも常に見える場所にいるということ……わかりますよね(笑)?
オープンキッチンは、私にとっては「イライラの温床」になりつつありました。
「見守り」が「干渉」になっていないか?
子どもが少し成長して一人で遊べるようになると、つい口うるさく注意してしまうことも増えました。
小学生になると、宿題をしたり、ゲームで遊んだりする時間も増えてきますよね。我が家では、Switchなどのゲームはリビングで遊ぶルールにしていました。
ですが、子どもが熱中して遊んでいても、目に入るとつい私がキッチンからあれこれと声をかけてしまい、頻繁に口喧嘩に……。
私自身は「見守っているつもり」でしたが、子どもからすればただの「干渉」だったのだと思います。
誤解のないように言っておくと、決して「オープンキッチンという環境が悪い」わけではありません。キッチンからリビングで過ごす子どもを見ながら、「言わなくていいことは言わない」「おおらかに見守る」ことができるご家庭なら、何の問題もないと思います。
自分は、仕事では、わりとじっと見守ることができたタイプなのに、家にいるとなぜか我が子に対しては口うるさくなってしまう。 「どうして私はこんなに余裕がないんだろう」と、自分を責めては「言わないようにしよう」と何度も努力しました。
母親ってこんなものなのか?自分がおおらかに見守れない育児スキルが低いのか?何が正解かわからないけど、今の状況が続くのは良くない気がする。
そこで、「お互いのために、あえて見えない環境(物理的な距離)を作った方がいいのでは?」と考えるようになりました。
そんなふうに考え始めたとき、ちょうど戸建てを建てる話が持ち上がったのです。
心地よい親子の距離感
物理的な距離を意識するようになり、成長する子どもたちとの近い未来の在り方を、じっくり考えました。
「子どもが見える場所にいないと心配」という考え方も、もちろん分かります。
でも私は、ふと考えるようになりました。
子どもが何歳になったら、私は子どもが私の視界にいなくても「大丈夫」と思えるんだろう?
子どもは成長するにつれて、少しずつ活動範囲が広がっていきます。
学校へ行き、友達と遊び、習い事に出かけ、そのうち一人で出かけるようになる。大学生になれば、家を出て離れて暮らすことだってあるかもしれません。
つまり、子どもが親の視界から離れていくのは、成長とともに自然なことなんですよね。
でも、その前に。
子どもが何歳になったら、私は先回りして手を出すのではなく、「大丈夫」と信じて待てるようになるんだろう?
子育てをするうえで、ずっと我が子を目で追いかけ続ける必要はないのかもしれない。
たとえリビングから離れていても、おもちゃで遊ぶ音、テレビのチャンネルを変えた音、楽しそうな笑い声、喧嘩になり始めた声や、ちょっと静かになった空気感――。
そういう子どもの気配って、私には案外わかるものだったんです。
子どもが母親を求めてきたときは、いつでもちゃんと向き合って対応したい。子どもが自分のところに来るのは大歓迎だし、めいっぱい甘えさせてあげたい。
でも、お腹と心が満たされたら、すっと離れて、それぞれの時間を過ごせる――。
そんな、ベタベタしすぎない心地よい距離感を作りたかったんです。
ずっと見張っていなくても、お腹が空けば本能で「狩り」にやってくる(笑)。
「流行りのオープンキッチンじゃなきゃ子育てができない」なんてことはないと思いました。
独立キッチンだからこそ作れる、「お互いのプライベートを尊重した、温かくて自立した親子関係」。
そのためには、あえてお互いに「見えない場所」にいる時間も必要なのかもしれない。
私は、そんな親子の関係を目指すことに決めました。
なぜ南東配置なのか?
我が家の場合、家族が全員揃うのは「朝」だった
独立キッチンに決めた後、家全体の配置を考えました。
夫は在宅勤務中心なので、朝は家にいます。子どもたちも朝食を食べてから学校へ。帰宅後も習い事や友達と遊んだり、中学生になれば部活も始まったりと、成長に伴って家にいる時間は少なくなっていくでしょう。
夫も、在宅で仕事をしていても、仕事のきりが悪いと夕飯の時間に間に合わない日がちらほら。子どもたちも成長するにつれて、それぞれの予定が増えていけば、家族全員そろって夕食を囲む機会は自然と少なくなっていくだろうと考えました。
そうなると、我が家で家族みんなが家にいる時間が一番長いのは、実は「朝」だったんですよね。
家族全員が家にいる朝の時間を、どこで過ごすか――それが間取りを考える上での大きな鍵になりました。
朝日を浴びながら朝食を完結させたい!
家族で朝食を摂る時間に重点を置くと、やはり欲しいのは朝日の光でした。朝、目覚めが悪く機嫌の悪い子どもを相手にするのも朝から疲れます。自然の力を借りて、元気に家を出てもらいたかったのです。
そう考えると、候補に挙がるのは東〜南東の位置。さらに、「朝、子どもたちを明るい光の中で送り出せるよう玄関も東向きにしたい」「キッチンに隣接する場所に洗濯機を置きたい」という希望も重ねていきました。
そうして試行錯誤の末、我が家が最終的に辿り着いたのが、「南東に独立キッチンとダイニングを配置する」という間取りだったのです。
キッチンで料理を作ったら、振り向いてポン!と配膳でき、食べ終わったらサッと片付けまで完結できる動線を目指し、キッチンのすぐ後ろにダイニングを設ける計画を立てました。
夜はどこにいても暗い
一番日当たりが良い南東に、家族全員が集まる開放的なリビングを持ってくるのが、一般的には王道なのだと思います。
あ、ここで「じゃあリビングはどこ?」と思いますよね(笑)。
実はリビングは南〜南西側に配置しています。「なんだ、結局リビングも日当たり良いじゃん!」とツッコミが飛んできそうですが(笑)、爽やかで清々しい光が入る「南東の角」を、あえて独立キッチン+ダイニングに譲ったというのが我が家のポイントです。
よく考えてみると、平日の日中に子どもたちがリビングにいるわけではありません。家族全員で過ごすのは日暮れ以降。
そして、ふと思ったのです。
「夜は、どこにいても暗いよね?」(笑)
日当たりの良い南東の場所を、みんなが集まる朝の時間に活かせるよう、ダイニングを南東に置く。
この考え方に辿り着いたからこそ、我が家は贅沢にも、南東に「独立キッチン+ダイニング」を配置することになりました。
「暑さ・汚れ」への不安と工夫
南東キッチンの懸念「夏の暑さ」への対策
南東にキッチンを置くとなると、「夏場は暑いんじゃないか」「食材が傷みやすいんじゃないか」と心配になりますよね。
実は私、以前住んでいたマンションが「西向き」で、夏の西日の強烈な暑さには本当に悩まされていました。帰宅してすぐにカーテンを閉めても、部屋の中に熱がこもり続けてずっと暑い……という経験があったのです。
だからこそ南東キッチンの暑さも不安だったのですが、我が家は独立キッチン+ダイニングというコンパクトな空間。全館空調を取り入れる設計にしたことで、暑さや湿気の問題も大丈夫だろうと考えて、建築を進めました。
吊り戸棚に合わせた「淡い黄色の天井」
以前住んでいたマンションを退去するとき、空っぽになった部屋を見て衝撃を受けたのが「キッチンの天井の汚れ(油ハネや黄ばみ)」でした。普段は気づかないけれど、キッチンの天井って本当に汚れるんですよね。
そこで新居の独立キッチン+ダイニングでは、吊り戸棚と一体感を出すために、天井を「淡い黄色」にすることにしました。(壁はエメラルドグリーン、キッチンは黄色です)
純粋に自分の「好き」を詰め込んだインテリアとして選んだ壁紙だったのですが、これが後に予想外の嬉しい効果をもたらすことになります。
▶︎ 後編はこちら:5年間暮らしてわかった「南東の独立キッチン+ダイニング」5年目の答え合わせ
